松本白鸚、松本幸四郎、市川染五郎の親子三代襲名で盛り上がっております。歌舞伎座より夜の部を観に行きました。
演目は、
「熊谷陣屋」
「壽三代歌舞伎賑」
「仮名手本忠臣蔵」七段目(祇園一力茶屋の場)
です。
目次
「二月大歌舞伎 夜の部 」公演情報
一、熊谷陣屋(くまがいじんや)
戦乱の世に翻弄された武将の心情
源氏方の武将熊谷直実が自らの陣屋に戻ると、妻の相模が息子小次郎の初陣を心配して訪れます。直実が敦盛を討った様子を語って聞かせますが、そこに敦盛の母である藤の方が姿を現し、直実に斬りかかります。藤の方と相模が悲しみに暮れるところ、直実が源義経のもとへ敦盛の首を届けようとしますが、そこへ義経が現れ、首実検が行われることになり…。
新幸四郎が高麗屋ゆかりの大役、熊谷次郎直実を襲名披露として勤めます。
二、壽三代歌舞伎賑(ことほぐさんだいかぶきのにぎわい)
襲名披露を祝う華やかな一幕
江戸の芝居町である木挽町。このたびの襲名を披露する高麗屋三代、二代目松本白鸚、十代目松本幸四郎、八代目市川染五郎が登場します。木挽町に集う皆々が出迎え、お祝いを述べます。
歌舞伎史上に残る2度目の親子孫三代襲名を寿ぐ、おめでたい一幕をご覧いただきます。
三、仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)七段目
遊興の中に交錯する仇討ちの本心
塩冶判官が殿中で刃傷に及び切腹してから半年。京都祇園で遊興三昧の大星由良之助のもとに仇討ちに加わりたいと寺岡平右衛門が訪れますが、相手にされません。そこへ、由良之助の息子の力弥が父に密書を届けにきたところ、平右衛門の妹の遊女お軽の知るところとなります。仇討ちを気付かれた由良之助のために、平右衛門はある決意をし…。
37年前、高麗屋三代襲名の際には、初代白鸚が由良之助、七代目染五郎が力弥を演じました。その舞台から時を経て、襲名披露にて新白鸚の由良之助、新染五郎の力弥という配役でご覧いただきます。
ほわいとレビュー ★★★☆☆
(以下、ややネタバレ有り。と言っても感想が細かめで恐らく見た人しか伝わらないかなとも思います。)
「二月大歌舞伎 夜の部」感想(ネタバレ含む)




私が歌舞伎を観るときは、基本的には幕見席で気になった演目だけ見ることが習慣なのですが、今回の目当ては、ファンの方ならお察しの通り七段目の、仁左衛門の平右衛門&玉三郎のお軽バージョン!!
この配役は実に38年ぶりだそうです。
もう次いつみられるか分からないよな…という気持ちと、私が実はまだ玉三郎さんを舞踊でしか見たことがなく、どんな声でどんなお芝居をするのか、が気になる次第で足を運びました。
公演の最後を確実に座ってみるためには通しで見るしかない!ということで、熊谷陣屋の2時間前から幕見席に並び、無事に観劇できました!
熊谷陣屋
十代目松本幸四郎さんの、熊谷次郎直実。
熊谷次郎直実の、役の大きさをひしひしと感じてしまう一方でございました。以前に吉右衛門さんで熊谷を見た記憶がかすかにあるのですが、この役は、人生経験を積んだ人だからこそ成しうる役なのだろうな、と。
新幸四郎さんは、個人的には俳優さんとして好きな方なのです。(何せ、私が初めて歌舞伎俳優、として認識した初めての方でしたので!)
若さ全面の熊谷、という印象。まろやかに通る二枚目の声しか知らなかったので、渋さ前面に滲み出るような声を初めて聞いて新鮮でした。
壽三代歌舞伎賑
俳優も見た目も豪華!以上!(笑)
名だたる幹部俳優たちが、まるで名題下のように同じ衣裳を着て並ぶ姿は圧巻でした・・・
途中、片岡秀太郎さんが仮花道から舞台へ進んで居並ぶときに、客席に背を向けて下座の中をガン見していたのが見えて無駄に笑ってしまいました(笑)。ちょっと不思議な光景だったけど、きっとお茶目さからきていることだって信じてる。
芝居前から口上に舞台を替える転換が、歌舞伎らしくてきれいで素敵でした。口上の飾りも、各所に高麗屋らしく三本松がたくさん描かれていて、めでたく華やか。
歌舞伎を観始めるようになってからは思うこともちょこちょこあったりはするのですが、私が歌舞伎に親しみを沸くようになったきっかけの一つには高麗屋さんがあるし、なんだかんだいって、高麗屋好きなんだなー私。
仮名手本忠臣蔵 七段目
今回の一番の目当て。
玉三郎さんのお軽。うちわを扇いでいるだけで何故あんなに美しい画になるの???
扇いでいる手首の滑らかさがなんかもう、上品さしかなくてきれい。でもお軽ってそんなに上品なキャラクターなのかしら?
仁左衛門さんの平右衛門。「情」と「粋」を絵にかいたような姿。ああいう格好良さを持ち合わせる人って、今本当にいないよなーって思います。単純な二枚目ってだけじゃないのです。
この、玉三郎さんと仁左衛門さんが兄弟の役なのですが、ただでさえ色気のある二人が、兄弟としてはどうなるんだろうと思っていました。
これが、想像以上のかわいさ・・・
お二人ともが色気を「愛嬌」に転化していて、実に兄弟っぽくなっていて、参りました。
平右衛門に斬られそうになって怯えるお軽の、花道から弱々しく兄に要求する様はリアルさとかわいさの共存。
夫の勘平の死を知らされた時の反応は、お軽が悲鳴を上げるパターンしか知らなかったのですが、玉三郎さんは、声が出ないというより、そのまま蒸発して消えてしまいそうな様子。激しく共感。
新白鸚さん、本当に歌舞伎らしい名調子。音楽的に聴いてました。力也に近付くところ、あくまで酒に溺れて堕落した人物を保ちながら、周りに人がいないか気にして進む様子が本当に自然で好きでした。
劇場情報
■劇場名
歌舞伎座
■住所
〒104-0061
東京都中央区銀座4-12-1
◯ 東京メトロ日比谷線・都営浅草線 東銀座駅[3番出口]直結
◯ 東京メトロ銀座線・丸ノ内線・日比谷線 銀座駅[A7番出口]徒歩5分
■電話番号
03-3545-6800(代)
■公式サイト
歌舞伎座(松竹株式会社 公式サイト)