こんにちは、ほわいと(@t_e_white)です。
久しぶりのストレート演劇を観てきました。
ひっそりと注目していた若手の歌舞伎俳優さん、尾上右近さんの初現代演劇出演作品です。
一言で言うと、脚本と演出が上質だなーと感じました。
インターネットが人を癒していくお芝居って、あまり観たことがなく新鮮でした。
上演時間は約2時間20分(休憩15分含む)。
目次
「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル」公演情報
「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル」作品紹介(公演特設ページより引用)
2012年ピューリッツァー賞戯曲部門賞受賞作品、日本初上演!歌舞伎界の新鋭、尾上右近が翻訳現代劇に初挑戦!
「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル~スプーン一杯の水、それは一歩踏み出すための人生のレシピ~」は、2008年にトニー賞4部門を受賞したブロードウェイミュージカル「イン・ザ・ハイツ」で脚本を担当したキアラ・アレグリア・ヒュディスの作で、2012年のピューリッツァー賞戯曲部門賞を受賞しました。
本作は、なぜ人は薬物に救いを求めてしまったのか、彼らが求めていたものが本当は何なのか、そこから立ち直った後、人々がどうやって生きていくのか迷い悩む姿を描いています。
コカインとインターネットという二つの媒介を通し、対比させることによって、人と人とが直に触れあう関係や結ばれた絆が、いかに人生にとって大切なものかをくっきりと浮かび上がらせています。
ほわいとレビュー ★★★★☆
(以下、ややネタバレ有り。と言っても感想が細かめで恐らく見た人しか伝わらないかなとも思います。)
「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル」感想(ネタバレ含む)
戯曲と演出が、無駄がなくシンプルで、テーマをしっかり浮き彫りにさせているような印象でした。
日本にいるとあまりコカインなどの麻薬にあまりなじみがありません。
麻薬中毒から脱することが、どれだけ人生の全てを賭けた戦いになるかは、きっと私にはどれだけ想像しても想像がつかないのだろうと思います。
それでも、この舞台を通してほんの、ほんの少し垣間見たような感じでした。
でもこの作品の主題は、コカインなどの麻薬と対峙することではなく、インターネットとリアルの人間社会についてです。
ただし、インターネットがリアルでの人と人との繋がりを薄くしてしまうといったような、一昔前に行われていたような一般論では全くありません。
インターネットでもリアルでも、どちらも本物のコミュニケーションなのです。
だって、どちらも最終的に人間に繋がるから。
発信しているのは人間だから。
そこに、物理的要素が加わるのがリアルで、それはむしろ障害にもなる場合だってあります。
インターネットでの人間社会と、リアルの人間社会を、とても対等に描いているように思えました。うーん現代的で良いですね。
主題になっているテーマと問いかけについて、私なりに考えをまとえてみました。
「なぜ人は薬物に救いを求めてしまったのか?」
ピュアすぎたというのが一つの理由かなとも思います。
苦しいことや困難なこととぶつかったときに、それを受け入れることが出来ずに、現実逃避のために使うことができます。
でも時には、現実逃避は生き抜く上で必要になることだってあるし、大きな手術の際には、痛みを感じなくするために意図的に使う麻薬(麻酔)だってあるわけです。
宗教や芸術から救いを見出すことだってできたはずとは思うのですが、それがたまたま麻薬になってしまったと思うと、切なさを感じずにはいられないです。
「彼らが求めていたものは本当は何なのか?」
麻薬中毒・依存から解放されること。これに尽きます。
そのために、他者と協力したり人の温もりや信頼を得ることが必要なんだと思いました。
最初や観ている途中では、周りの人のことを許すとか愛するとか、そのあたりがテーマかなと思っていました。
観終わって振り返りながら考えると、自分のことでせいいっぱい過ぎて、サイト管理者の俳句ママ以外は自分のことが第一だったよなーと。
唯一他者に目が向いていた俳句ママも、最終的には麻薬で命を絶とうと行動してしまうほど、人間ってすごくもろいものなんだよね、と。
でも現代でも、なんだかんだいって自分のことでせいいっぱいな人が9割以上のほとんどを占めていますよね、とも思います。私も含めて。
彼ら(麻薬中毒者)と私の違いって、たまたま麻薬に出会ったか出会わなかったか。そのくらいしか違いはないように思うのです。
「そこから立ち直った後、どうやって生きていくのか?」
既に麻薬によって、人生最高の快楽と陶酔と逃げ道を知ってしまっている分、もしかして立ち直った後の方がかなり苦しいのでは?と思いました。理解者が身近にいるとは限らないですし。
最終的に自分が選択・決断・行動しなければならないことは、登場人物みんなが分かっています。
あまりに超えるべきハードルが高くて苦しいながらも、より正しい方向へ自分を向かわせていく。その唯一の武器が、インターネットになる場合もあるのです。
最後に、演出や役者さんについてざっくりと。
インターネット上のチャットのやりとりを舞台化するってなかなか難しいなと思いました。
「削除」や「ログイン」って、日常的にパソコンでするから目にするしクリックする動作もイメージ出来るけど、いざ台詞として「削除」「ログイン」などと言われると新鮮です。
地味だけど、サイトへのログインとログアウトのときに毎回使われる効果音が好きでした。
注目の尾上右近さん。
声質がこもってる・・・!演技が悪くはないので、独特な声をどう扱っていくかが今後の課題でもあり、ハマる役と出会えれば完璧なんじゃないかなと思いました。




劇場情報
■劇場名
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
■住所
〒151-0051
渋谷区千駄ヶ谷5-24-2 タカシマヤタイムズスクエア南館7F
JR新宿駅 新南改札より徒歩5分、南口より徒歩8分
JR代々木駅東口より徒歩5分
地下鉄副都心線 新宿三丁目駅 E8出口より徒歩5分
■電話番号
03-5361-3321(代)
■公式サイト
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
新宿東口にある紀伊国屋ホールとは反対方向なので、ご注意を!!