こんにちは、ほわいと(@t_e_white)です。
2日目の歌舞伎座、夜の部を観てきました。
正直あまりお客さんの入りは良くないように思いましたが、個人的には近年稀にみる良プログラムです!
秀山祭夜の部、平日夜の部開場時。
玉三郎さん出てるし幕見席通し立ち見覚悟してたら、全然大丈夫だった。むしろ3階B席の当日券とれた(爆)あれれー#歌舞伎座幕見 pic.twitter.com/Xcdj1ydHQc— ほわいと@手荒れと観劇 (@t_e_white) 2018年9月3日
目次
「秀山祭九月大歌舞伎 夜の部」2018年公演情報
「秀山祭九月大歌舞伎 夜の部」作品紹介(公演特設ページより引用)
一、松寿操り三番叟(まつのことぶきあやつりさんばそう)
操り人形が軽快に舞う三番叟
後見が木箱から糸操りの三番叟の人形を取り出し、操りの糸を巧みに操って三番叟が軽やかに踊り始めます。途中で操りの糸が切れて三番叟の人形は倒れてしまいますが、後見が糸をつなぐと再び踊り始め、五穀豊穣を願ってめでたく舞い納めるのでした。
三番叟を人形らしく軽妙に踊る楽しさあふれる舞踊をご覧いただきます。二、俊寛(しゅんかん)
絶海の孤島で起きる悲劇
鬼界ヶ島に流罪となった俊寛僧都、平判官康頼、丹波少将成経。俊寛は流人生活に憔悴していますが、成経が島に住む海女の千鳥と夫婦になることを聞き、日頃の憂いを忘れ喜び夫婦の盃事を行います。そこへ都からの赦免船が到着し、上使の瀬尾太郎兼康から康頼と成経の二人が許されることが知らされます。自分の名がない俊寛は嘆きますが、もう一人の上使丹左衛門尉基康が現れ、俊寛にも赦免が告げられます。一同は喜びますが、千鳥の乗船は許されず、悲嘆にくれる千鳥の様子を見た俊寛は…。
俊寛の孤独と悲哀を描き出す近松門左衛門の名作をご堪能ください。三、新作歌舞伎 幽玄(ゆうげん)
能楽を題材にした新たな舞台
〈羽衣〉 漁師伯竜が三保の松原で美しい衣を見つけ、持ち帰ろうとしたところ衣は天の羽衣でした。姿を現した天女は返して欲しいと頼みますが…。
〈石橋〉 美しく咲き乱れる牡丹の花と戯れるように勇壮な舞を獅子の精が見せ、深山幽谷に姿を現すと荘厳な音色が響き渡り…。
〈道成寺〉 女人禁制の寺へやって来たのは一人の白拍子。境内に入った白拍子は烏帽子をつけて舞い始めますが…。
能の演目を題材とした新作歌舞伎舞踊をお楽しみください。
ほわいとレビュー ★★★★★
(以下、ややネタバレ有り。と言っても感想が細かめで恐らく見た人しか伝わらないかなとも思います。)
「秀山祭九月大歌舞伎 夜の部」感想(ネタバレ含む)




松寿操り三番叟
何だかんだいって、襲名してから初観劇だったかもしれない十代目松本幸四郎さん。
三番叟が糸で操られる人形の設定のためか、とにかく可愛らしかったです。




あとは何というか、幸四郎さんは華があるというか、無難にうまいなーと思いました。
舞台装置も、純粋な松羽目の飾りだけでなく、小さな松が描かれていたりとデザインがかわいいです。
後見役が糸を結び直したり、確認で少しつり上げたりするのに合わせて三番叟も腕を上げたりするのですが、動き合わせるの大変だろうなーと。
何で合わせているんでしょう?音楽?むしろお互いの動き見えてる?
吊られた糸が途中で切れて、ぐるぐる回って絡まっていく様子がとても分かりやすくて面白かったです。
最後の幕閉めまで、足をぶらぶらさせてるのかわいい!
こういう舞踊作品は、「かわいいね」とか、「あ、今糸切れたんだね」とか、親しい人とおしゃべりながら観れるともっと楽しめるのになって思うんです。
私語が良くないのは分かっているし、しませんけど。
俊寛
私はついに観てしまいました。
今、日本で観られる最高峰の俊寛を。
歌舞伎観て泣いたの初めてかも。
やっぱり年月を重ねないとできない、成り立たない役ってあるんだなと改めて実感しました。(もちろん、若いうちにしか出来ない役もたくさんあるのですけれど。)
千鳥とのお祝いに舞を舞って転んでしまうのですが、その笑っているとも泣いているとも言い難い、「おかしみ」から「かなしみ」へのグラデーションがあまりに秀逸で・・・
最後、見送る船一行に呼びかける「おーい」の悲痛さと、何度も呼びかける声にこもるものが毎回違うところに、自分が泣けてしまいました。
人情や愛情で身代わりになったけど、生きることや他人のいる社会の中に戻ることへの気持ちが残っている様子が垣間見えます。
大岩の上で極まったときには、もう死んでいるように見えました。
花道の波が俊寛の動きに合わせて押し寄せたり、分割の引き取りで下手に浪が表れる様子もなるほど。上手は一枚ものでゆっくり浪が表れるのもなるほど。
ちなみに歌舞伎の俊寛は、人形浄瑠璃の「平家女護島」からきているのですが、さらにその元となっているのが、能の「俊寛」。
こちらのDVDがありました!
幽玄 全体を通して
坂東玉三郎&花柳壽輔による演出・振り付け。
「現代の能」という印象です。見事に能の本質・エッセンスを取り出して、歌舞伎のスピード感と融合しています。
鼓童による太鼓の群演奏と合わせるなんて良い意味で、ずるい。組み合わせの勝利です。海外の人にもウケるだろうし、こりゃ何にも言えないわって感じです。
鼓童の人たちが謡も兼ねているのですが、正直付け焼き刃感は否めなかったので、やっぱり謳の専門の人の方が良かったなと。(そんなことすると出演人数がとんでもないことになるので難しいだろうというのは重々承知。)
チラシや公式サイトでも鼓童さんがあまり目立っていないのですが、実際観劇してみると玉三郎さんの踊りと鼓童の演奏がほぼ半々なので、玉三郎だけが目当ての人はちょっと残念かもしれないです。
ただ鼓童さんも初見でしたが本当に素晴らしかったので、パフォーマンスもぜひ楽しんでほしいところです!
羽衣
開演時間になると、客席の明かりが明るいまま、静かに鼓童の人たちが入場して演奏が始まっていくのですが、人によっては演奏始まるまで気づかない人もいるのでは?と。
半分くらい揃ったところでお客さんの注目を集めてた方が、客席側も「幽玄」の世界に入る準備が出来たのではないかなと思いました。
玉三郎さんの顔、ほんとうにお面みたい。でもまばたきすると人間だ!ってなるので妙な感じ。
それにしても、玉三郎さんのあの迫力と太鼓の音響効果で迫られたら後ずさりもするし、「はい!羽衣返します!」ってなるよね。話し終わっちゃうけど。
「見えないものを見えるようにするのが、演劇」とお話ししていたSCOT鈴木忠志さんの言葉をふと思い出します。
本当はきちんと所作舞台を使いたかったんじゃないかなーとも思いました。舞台機構をめいいっぱい使うから難しいのも分かりますが。
作品は素晴らしいのですが、玉三郎さんでないと興行的に成り立たないなーと余計なことも考えてしまう私の悪いクセです。
石橋
女じゃない玉三郎さん初めて観ました。
全ての振りが優雅かつピタッとした動きが、やはり周りの方と比べると別格です。
5人獅子はやっぱり迫力あって思わず拍手!
道成寺
幕開きのビジュアルがとにかく美しいです!ときめき。
蝋燭をたくさん灯している様子が、どことなくオペラ座の怪人を思い出します。(分かる人、手を挙げてー!)
コンテンポラリーダンスならぬ、コンテンポラリー舞踊。
鼓童の人たちが太鼓叩くのに合わせて、玉三郎扮する花子も自分で小鼓をたたく振りがあったのですが、私的にはただのコントにしか見えず・・・あれ必要ですか??戸惑い。。
近年の日本舞踊協会の新作を見ても思うんですが、最近の新作舞踊クオリティ高くないですか?
どれ見ても面白いと思うんですけど。
「秀山祭九月大歌舞伎 夜の部」総評。
冒頭と同じ感想になるのですが、プログラムとして稀にみる良プログラム揃いだと思います。
初めは玉三郎さん目当てで行ったけれど、通しで観れて良かったです!!
劇場情報
■劇場名
歌舞伎座
■住所
〒104-0061
東京都中央区銀座4-12-1
◯ 東京メトロ日比谷線・都営浅草線 東銀座駅[3番出口]直結
◯ 東京メトロ銀座線・丸ノ内線・日比谷線 銀座駅[A7番出口]徒歩5分
■電話番号
03-3545-6800(代)
■公式サイト
歌舞伎美人